国さんの言語化記録

ネタバレ有りの感想ブログです。

『Inscryption』感想

ゲームに期待するものが『体験をデザインする事』である自分は絶対やるべきゲームでした。

以下ネタバレ感想。

 

「闇のカードゲームでありそれ以外の仕掛け要素もある」ということだけ聞いてプレイ開始、序盤プレイ中に任天堂の公式紹介動画を試聴し実写パートがあるネタバレをくらうも、クリア後に感想を検索してARG要素がありそれによって賛否両論分かれていることを知ると「メタ要素があることを初手で忠告しておかないとダメだな…」と納得しました。
フリーゲームであれば急にメタになっても嫌ならやめればいいだけですが、お金を払ってミスマッチしちゃうと悲しいですからね…。

 

正直一番楽しかったのはACT1でしたね。
序盤故の今後への期待と、どんどん新しい情報が出てくることでの快感もありますが、振り返ってみればゲームマスターとしてのレシーが有能で盛り上げ上手だったのが一番大きいと思います。
フィールドを進んでいくときの雰囲気づくり、イベントマスやボス戦での迫真に迫る演技、恐怖を煽る演出をきちんとやってくれることでただカードゲームをやるだけではない臨場感がありました。

月をカードにする演出の格好よさといったら…。
死んでやり直す前提の設計だからこそ同じマスでも文章の差分がいくつか用意されてるのも非常によかったです。

また失敗することでいつか局面をひっくり返せるような無双カードを作れることになるのも負けがただの終わりじゃないと言うことで良かった…。

自分はレシーを倒すまでに十四枚カードを作りましたが、途中で作れたノーコスト体力12攻撃力2のカードに、不死のマークをつけることに成功したおかげで攻略に成功しました。

オコジョたちのカードの絵がメインシナリオの進行具合で変わっていくのもめちゃくちゃ面白かった…「どんどん可愛く無くなる!!!」という衝撃はあったけど。


それに比べてACT3はボス戦での専用ルールには「まだまだこうやってルールを発展させていくことができるのか!」と楽しませてもらったのですが、フィールドマップを進んでいくときの演出がほとんどなく、無機質なわりに広くて退屈に感じてしまいました。
ストーリー上P03に権限は渡せないというふうにプレイヤーにも思わせないといけないので、あえて面白くなりすぎないように作られてるのではないかな、とも思うのですが、「レシおじのサービス精神を見習え〜〜〜」とは言いたくなりましたね。

ACT1とACT2で存在していたカードゲーム部分以外でのわくわくが薄い印象です。

 

ARGとしての要素については私は否定的感情はないです。
P03がゲーム自体を乗っ取り現実にアップロードしようとしていたことを考えれば、このようなメタ要素は存在して然るべきとも思います。
ただそれがあまりにリアルタイム性がありすぎるもの(ゲーム内でフロッピーが発見されたのと同じ現実の場所に行ってフロッピー掘り起こしたり、暗号を解いた先でのURLで申し込んでフロッピーを手に入れたり等。今ではもう確認しに行けないものがいくつかあります)なのは、ゲームという媒体とはあまり合っていないのではないかと感じました。
ドラマやアニメ、映画など放映期間が決まっているものでしたら、ヒントに時限性があってもやむを得えません。
しかしいつプレイするかは全くの自由の買い切り型ゲームで、後からだとゲーム外部のヒントを自分で集めるのは絶対不可能になってしまうと最大限の楽しみが得られる可能性を最初から補償しようとはしてくれなかったんだなとガッカリしてしまいます。
たとえば『忌録』というホラー小説は作中に出てくるブログが現実に存在するのですが、発売から九年経っても存在しています。
いつ読んでも読者がヒントに触れられる用にしてあるわけです。
このような状態であれば、否定の意見もいくぶんか少なくなったのでは?と思います。

またコンシューマ版ではソースコードをいじることができないため、代わりに新しい謎要素が追加されていますが、その謎を解くヒントの一つはSwitch版では表現できないため解くことができなくなっています。

自分はSwitch版でプレイしたためこの点は素直にガッカリしました。

 

個人的にはゲームには体験や『そのゲームの在り方そのもの』をデザインしようとしてほしい…と思っているので、そういう意味では私のドストライクゾーンです。
ビジュアル面や音楽も非常に良く、カードゲーム自体にも中毒性があり満足度は高いです。

キャラクターも曲者揃いで、ACTが変わるごとに違う側面が見えるのも良かった。

なんだかんだ一番好きと言うか、放っておけなくなってしまったのは失敗作君かも…。
グロテスクな要素も多く、突如挟まれる実写パートなどは興奮する人と冷めてしまう人にはっきり分かれると思うので、万人におすすめできるものではありませんが、このゲームをやるべき人は絶対にいるし、自分もそうだったと感じています。