国さんの言語化記録

ネタバレ有りの感想ブログです。

『Outer Wilds』感想

あらかじめことわりを入れておくが、私はこのゲームを自分自身でクリアできていない。

Switch版が出ると聞いた時から心待ちにしており、DLC含め購入し楽しくプレイしていたのだが、探索を重ねた結果自身でエンディングを迎えることは不可能と判断し、先人飛行士たちのプレイ動画を観測させてもらうことで旅の終わりを体験させてもらった。

攻略を断念した理由は後述する。

あえて未クリアであることを明言し感想を書くのは決してゲーム自体へ低評価をつける意味合いではなく、自分のように『アクション性の高い操作を必要とするゲームをクリアすることが不得意な者』でも、「自分にできる範囲で宇宙を探索するのは楽しかったし、このゲームに描かれた物語は美しく観測する価値のあるものだったから、気になっているならば攻略できない可能性を恐れず気軽に手を出してみて欲しい、詰んだって諦めたっていい」ということを表明するためである。

自分にはクリアできないから…で体験自体を諦めてしまうのは悲しいことだと思うから。

(ただしじゃぁやってみようかなと思った方はまだこの記事全文は開かないで欲しい、以下はネタバレ感想のため)

 

なおDLCの内容は含まれていない。

 

自分にとって良くなかったと感じた点

 

先にストレスに感じたことをあげる。

このゲームが人を選ぶ理由としてよく挙げられている点は大きく二つ

『宇宙船(=探査艇)や無重力空間での操作法にクセがある』

『次にプレイヤーが取るべき行動および目的へのゲームからのガイドがない』

であると思われるが、この点は了承済みで始めたこともあり気にはならなかった。

(気にしてないだけで探査艇はよくぼろぼろにしてたし木に串刺しにしたことも気づいたらコックピットだけ残して後部ごと宇宙のもくずになってることも爆発したこともあった。)

上記の二点はそもそもこのゲームのルール、『ゲーム性』そのものであると言える。

故にいくらむずかしかろうがそういうルールなので構わないのである。

そのゲーム性から外れたところの理不尽、たどり着くことを困難にするためだけに置かれた不便さが「脆い空洞シェルターへの道の頼りなさの凄さ」「南部研究所への道」「太陽ステーションへのダイブ」「過程が多すぎる湖底の洞窟への道」であり、私が自分自身でのクリアを断念した理由でもある。

このゲームが普通に高度なアクションが要求されることを、見聞きした限りでは誰も注意していなかったのだが?!

おそらくこのゲームを愛し他者にもやってもらいたいと思っている方々はこの程度のアクションはクリアできるのだろうと思う。

ただカービィはそよ風モードでプレイし、マリオオデッセイは自分ではクリアできず、マリオワンダーの難易度四以上のステージは未クリアで、リメイク前のマリオRPGのアクション部分で詰み長年クリアしていない私にはこのゲームの難所はハードルが高すぎたのである。

道が崩れていて本来のルートを通れなかったり、時間制限があるのはわかるのだ。

もっと崩壊させて宇宙から入り込む量子知識の塔や、砂でサボテンを埋めてから通る箇所などは世界観設定とマッチさせたギミックでなので何度やり直しになろうとも「これをやらなければいけない」と思えた。

ギミックに納得感があったから。

侵入者攻略も「急にマリオの氷ステージじゃんよ」と思ったがそれを笑う余裕はあった。

しかし例えば南部研究所に行くには『ワープからワープへ自力で飛び乗ったあといくつか足場を飛び渡り、幽霊物質を避けつつ壁を移動する、ちょっと加減を間違えると下に落ちてブラックホールに飲み込まれる』というやたら長いわりになるほど!と思えるギミックが存在しないただの高難易度アクションをこなさないといけない。

ここには納得感が存在しない、そのため数度の挫折でこういうことがしたくてこのゲームがやりたかったわけじゃないんだがの気持ちになってしまう。

太陽ステーションのダイブはそれ自体は何度も飛んでみればいいだけであるが、失敗すると砂が引くのをまって太陽のワープ塔に侵入しワープしてくる手間が一瞬で無駄になるのはだいぶ心が折れる

 

しかし直接エンディングを諦めたのはアンコウのせいだ。

Feldspar先輩(と先輩が味見したクラゲ)にはかろうじて会ったことがあるが船には辿り着けたことがない。

ただこのゲームはあまり生きてる生物が登場せず、最初にアンコウに会った時は生命に出会えた喜びを感じたため(こっちが食べられたけど)、彼らのことをあまり悪くは思いたくないという気持ちがある。

でも結構数居るのと、最終局面でもアンコウから逃げなきゃいけないのはちょっとナンセンスかも…とは思ったな…。

クライマックスへ盛り上げるようなBGMを流しつつも普通にアンコウが襲ってくるのはちょっと…何度か世界をこれで終わらせてしまったし…。

なぜかアンコウの姿が見えなくなっているなどしてもクライマックス演出としてありだったのではないかと思うのだが。

 

自分にとって最高だったと感じた点

 

惑星探索が楽しかった!!

慣れないうちは惑星の動きに翻弄されそのまま死に至ることが多く、自然に対する根源的恐怖で震えるばかりだった。

しかし宇宙に身一つで放り出され壮大で静謐で圧倒的な自由と孤独を感じていると、それには悲しみがないことに気づく。

人間社会の、特に都会で暮らしていると気づくことのないことだった。

 

またゲーム性と噛み合ったストーリー構成が非常に良かった。

最初:ループを止めること自体がゲームの目的なのかと思わせる

序盤:ループの最後には超新星爆発が起きていることがわかりではこちらを止めるのが本来の目的なのかと原因を探らせる

中盤:ループも超新星爆発もNomaiのせい?でもNomaiって憎めない人たちばっかだな〜と感じさせるような記録を多数発見させられる。

終盤:宇宙自体の寿命です。現宇宙の滅び自体は免れないよ。

という風に書き出すと身も蓋もない感じがしてしまうが、安易にそれぞれの時代で生物種に救いがないのもSFとしてよかったと思う。

我々の太陽系も終わる時がくれば終わるし…。

終わりを疑似体験できる、というのも、ゲームでできる表現の素晴らしさであるし。

 

とりわけ量子の月に関わることは全てが美しい。

初めから見えているのに辿り着けなかった星に、旅をしてきて蓄積した知識で降り立つというギミックも、そこに本来出会えるはずがなかった存在がいることも。

なんとなく序盤からいつか生きてるNomaiと会えるような気はしていたのだ。

一人だけコールドスリープのような形で生き残っているとか、意識が移された彫像がありそれと対話ができるとか、そんなことがひとつくらいありそうな気がしていた。

しかしそれがNomaiが後世に残そうとして残したわけでなく、『量子』というこのゲームで一番印象的な現象が引き起こした形で実現するとは思っていなかったため、その流れの美しさに感嘆してしまった。

個人的にSolanumに出会い、Solanumが私を友と呼んでくれたことが、この旅の全てが報われた瞬間であったと感じた。

心情的にはここがクライマックスだと思っている(これ以降のことはエピローグというか新しい始まりのための物語)。

Solanumと邂逅するために自分は旅をしてきたのだと思えたのだ。

聡明なSolanumは自身がシュレティンガーの猫であることを正しく理解しているであろう。

Solanum自身が生きているという認識があるならばSolanumは生きているのだが、知覚する他者が現れたことで、Solanumははっきりと今ここに生きている自分も確かに存在するのだと思えたのではないだろうか。

だからSolanumは私のことを友と呼んでくれたのだと…。

Solanumに最初に会った時アトルロックで少し寂しそうにしているEskerのことを思い出した。

上で宇宙で一人きり感じる孤独には悲しみがないと書いた、しかしそれはこの宇宙に巻き起こる全てのことの一部として自分が存在するのだと理解しその圧倒的な大きさを受け入れた時の心情である。

人々の群れから離れて暮らすEsker、量子の月で生きている状態と死んでいる状態が重なっているSolanum、この二人の孤独に共通する寂しさや悲しみというのは、「取り残される」ことではないだろうか。

その心を慰められるのは他者との出会いに他ならないのではないかと思う。

 

Nomaiの知恵を持ってしても太陽は爆発させられなかった。

Nomaiは突如飛来した未知の物質になすすべもなく滅亡してしまった。

Hearthianの発展途上の知恵をプラスしてもこの宇宙の終わりを止めることはできない。

では彼らが知的好奇心を燃やすことは無駄だったのだろうか?

そうではない。

彼らがそれぞれ知ろうとしてきたことで、Solanumは量子の月に存在することとなり、主人公はそこに訪れることになった。

本来出会うはずのなかった二人が二十八万年の時を経て出会えたのだ。

Solanumに出会えて本当によかった。

 

欲を言うならばSolanumにもマシュマロをプレゼントしたかったし、自分も楽器かなにかでみんなのセッションに混ざりたかった。

Solanumに私もあなたを大切な友達だと思ったことがどうか伝わっていますように。

 

最後に

一旦は自身でクリアを諦めてはいるが、ちまちまプレイしていつかは自分で新宇宙を創造させたいとは思っている。

どのくらいかかるかはわからないが…。

(一応百三十回くらいは飛行してることは付け加えておく。)

 

ひとまずDLCの旅に出ます。